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執筆者の写真永淵研究室の研究員

Iさんのため息

小規模金採掘 (Artisanal Small-scale Gold Mining: ASGM)活動が市街地の中心部から数キロという場所で行われているインドネシア中央スラウェシ州の州都、パル。少し前、再びASGM活動地区のポボヤを訪ねた。


 私たちは現地の大学の研究者と共同で、水銀汚染の研究を行っている。案内はIさん。現地の大学の研究者だ。彼によれば、この地域のASGM由来の水銀汚染について論文を書き、学位を取得しており、事情に詳しい。海外での調査は、通常こういった現地のカウンターパートがいなければ、調査は不可能である。ASGMの場合はその性格上、利権が絡み、不用意な調査は大変危険である。私達は彼の車に乗りこみ、一路ポボヤに向かう。ここでは、ハンディ型の水銀計を使って大気中水銀の観測を行った。ハンディ型の水銀計はポンプによって大気を吸引して大気中水銀を捕集して測定する。そこで、車の窓を少しだけ開け、水銀計につながるチューブを窓の外に出す。位置はGPSで確認する。


 広場に出た。Iさんは広場に車を止めた。そして、車を降り、広場の横にある金精錬をしている小屋に歩いていった。そこのおじさんとしばし、話をし、精錬の様子を見せてもらう。布の袋に水銀計をいれ、そっと大気中水銀濃度を測る。手元の水銀計はみるみる値が上昇していた。一通り話をしたのち、Iさんは私達に教えてくれた。「さっき、車を止めたところは、僕の土地なんだ。そのときは、ここでASGM活動は全くしていなかった。でも、今やこのありさまなんだ。」彼が土地を買ったのはほんの7,8年前なのだそうだ。家を建てようと数人の友達と購入したのだが、どうしようもなく、更地のままだ。


ASGMは金鉱石が採掘でき金精錬ができると分かると、短期間に一斉に人が集まり、精錬が行われるようになると言われる。そのために、ASGMが世界中でどの程度、また、どの規模で行われているかを把握するのは至難なのである。


(写真) Iさんの土地から見た風景。目の前には金精錬作業をする小屋ができていた。


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