フィールドワークにいくと、今しかとれないものばかり、とりあえずこれもあれも採っておこうという気持ちが働き、手当たりしだいにサンプルを収集してしまう傾向にある。帰ってくると、大量のサンプルを前にちょっとため息、すべてのサンプルを分析にかけてゆく。特殊な装置が必要な場合を除き、基本的には、自分たちで分析をする。
調査はそれぞれの研究に適した場所に設定するようにしている。調査地は研究の要、山岳であったり海外であったりと、さまざまである。調査のようすはまた別の記事で紹介していく予定である。
サンプルの採取は、水ならポリビンに採取、コケなどであればちいさなジップロックにつめればよい。それでも、水サンプルの場合は、事前に100コ単位で大量にポリビンの洗浄をせねばならず、調査前にはひたすら洗う。
大気の場合はちょっと難しく現場の大気をポンプで吸引してろ紙上にサンプルを集める(例えば粒子状物質など)。となると、ポンプを動かす動力が必要となり、電源をどうやって確保するかという問題がおこるのである (我々の主戦場には、商用電源がない) 。我々のこういった、フィールドでのワガママな願いをかなえてくれる力強い助っ人の存在は本当に重要である。
さて、このようにさまざまな制約を乗り越えて、いざ現地へ。しかしフィールドでは、工具などを含めてちいさな道具を忘れて調査の致命傷になることもしばしば。
フィールドから帰ってくると分析が待ち構えている。分析項目によっては、器具のちょっとした汚れも許されず、気を使ったり、試薬を入れた後の時間管理が重要だったり、ちょっとしたコツや慣れも必要になり、時には失敗してやり直すことも。
基本的な分析の項目は、主要イオン、重金属、水銀、TOC。ほかにも必要となれば、電子顕微鏡を使っての表面観察、同位体分析なども行っている。
我々の研究グループがとくに力を入れているのが環境中水銀。水銀の分析はICP-MSやイオンクロマトグラフとはちがって一つの装置(水銀計)で測定することになる。それも、水用、大気用、土壌用と別々である。さらに現場でのモニタリング用の水銀計やモバイル型の水銀計と水銀分析のためだけに装置が複数個必要になる。このようなことから日本の研究機関で、水銀の分析装置を導入しているところは、いまのところ多くはないようである。(ICP-MSは水銀の分析も可能なのだが、精度があまりよくない、と言われている) 。
私達のグループでは、大気中に存在する水銀、年輪・コケ・毛髪・魚といった固形物に含まれる水銀、水中に含まれるごく微量の水銀を精度よく測定する装置を導入して分析を行っている。
これからフィールド調査の様子、分析のこと、学会発表など、日常のさまざまな話題を書き綴っていく予定である。(KN)
年輪中の水銀の分析を行っているところ。年輪のコアを任意の長さに切断し、分析に供する。
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