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執筆者の写真永淵研究室の研究員

ヒルと戦う

湿気が多くなる梅雨から晩秋まで、森林域での調査は生物との戦いだ。筆者が警戒する生物のひとつがヒルだ。例えば、屋久島。シカが生息する場所にはヒルあり、である。私達研究グループが調査している地点にも当然ヒルが出る。つまようじほどの太さで長さが1㎝程度のヒルも吸血すると、親指ほどの大きさにもなる。吸血されると、血が止まらなくなるという。


 蒸し暑い中、ヒル対策は大変である。上下レインウェアはもちろん着る。そしてレインウェアの上着の裾は、レインウェアズボンに入れ、レインウェアのズボンの裾は靴下の中に入れる。首にはタオルをまきつけ、レインウェアのフードを被る。できる限り手袋をはめる。当然、ジッパーは全部しめる。仕上げに森林系の研究者御用達のエアサロンパスを体全体に吹き付けて完成だ。ヒルはエアサロンパスを嫌うらしい。


 ヒルは二酸化炭素に寄ってくるといわれ、木の上から降ってくることもある。数人で行くなら先頭が、一番リスクが低いということになっている。ヒルは思っているより動くスピードが速く、ぼんやり立ち止まろうものなら足元からヒルが登り始め瞬く間に上のほうまで登ってくる。したがって、一か所に座り込むなんて、もってのほか、作業しながらもひたすら体を動かし、一緒に行った同僚にヒルがついてないかにも細心の注意を払う。このヒルの話をすると、それぞれで反応が違うようだ。


「ヒルは石灰をまくといいらしいよ」と、屋久島の郷土菓子、かからん団子と、つのまきを売るおばさん。

「いや、ヒルは別にいいよ、病原体はもっていないから。もっといやなのはノミとダニだよ。」と、ボルネオで調査をする昆虫学者。

「ヒル!?一度屋久島に行ってみたいと思っていたけれど、もう絶対行かない。」と、数学者。この後、ヒルがいないところもあるし、冬は見かけないと言っても、説得むなしく聞き入れてもらえることはなかった。

「ところで、屋久島のヒルの背には何本の線がはいっているのでしょうか?」屋久島の役所に問い合わせてきた、ヒルの研究者。

この時期の調査は、枯れ葉がすべてヒルに見えて、精神的につかれる筆者である。それでも、話のタネにはなるようである。



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湿気の多い場所は要注意。怖いもの見たさでヒルを観察してみたい気はする。しかし、車に積み込んだ調査用具にコッソリとついたヒルが、座席のほうに這ってきてふと手をみると、「ついてる~!!」と絶叫することも。観察するような余裕はまったくない。


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