地平線のかなたまで広がる、モンゴルの草原。ここに住む遊牧民たちの飲み水は、どうやって手に入れているのだろうか?場所によっても異なるが日本の年間の降水量は、1,500 mm 程度。それに対してモンゴルの高原の年間降水量は50~250mm 程度と言われている。
冬場は凍てつく寒さでフィールド調査が難しいため、私達研究グループは夏季に調査に赴く。ここ数年、毎年夏に調査に出かけているが、雨にあうことはほとんどない。降ってもほんの短時間ザッとふる程度。木はほとんど見かけず、背の低い草が大地を覆う。広い平野をくねくねと雄大にどこまでも流れる川がところどころに見られるが、広大な大地を車で疾走してもわざわざ見に行かない限り、川にであうことはほぼない。このようなところで、人々が頼る水源のひとつが、地下水である。
ところで、私達がモンゴルと聞くと、相撲の力士が多く誕生していて、首都がウランバートルのモンゴル国を想像するのではないだろうか。そして、限りなく続く草原とそこを駆け抜ける馬や羊。しかし、このような風景はモンゴル国内にのみではなく、その一部は中国国内にまで広がっており、内蒙古自治区と呼ばれる。そこでもやはり、遊牧生活が営まれているのである。その歴史は他に譲るが、両方を比較していちばんに感じる違いが土地利用のしくみであろう。
内蒙古では各戸の土地は柵で区切られているのに対し、モンゴル国の草原で柵をみることはほとんどない。柵で区切るといっても、一般的な日本の住宅街のようではなく、例えるならば北海道のような、広大な敷地を区切ったようになっている。広大とはいえ、内蒙古では遊牧民の移動が制限されるのに対し、モンゴル国では自由に移動ができる。
その昔は、雪解け水や河川水を飲み水として利用していたようであるが、近年では、技術の発達もあり、両方の地域で、地下水は飲み水として利用されている。草原に出て、遊牧民のお宅を訪問すると、いろいろな声が聞こえてくる。地下水について聞いてみると、利用する機会が増えたが、骨が弱っている人が増えている気がする。その因果関係はわからないがもしかして地下水を飲み水として飲むことと関係があるのか?私たちはまず、地下水の水質をしらべてみることから始めた。
(写真)
草原にて。深井戸の場合は発電機付きポンプでくみ上げる。井戸のまわりには、家畜用が飲みやすい、細長い水飲み場が置かれ、周囲に家畜のフンが一面にちらばっている。
コメント