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執筆者の写真永淵研究室の研究員

金精錬と水銀

更新日:2018年3月30日

金と水銀は容易にアマルガム (合金) を作ることから、その性質を利用して、小規模の金採掘活動が世界中で行われている。このことをArtisanal Small-scale Gold Mining (ASGM), 小規模金採掘活動、とよんでいる。

金精錬では、砂金や砕いた金鉱石を水銀と水と混ぜあわせてアマルガム (水銀団子) を作り、最終的にはアセチレンバーナーをつかって水銀を大気中に揮発させて金を取り出す。このような場所では、人々は食べものを介してのみならず、呼吸によって水銀を取り込んでしまう。 ごく微量でも人体や生態系に影響のある水銀、ここでは、大量に使われているのだ。

たとえば、農作物を育てるのには数か月はかかる (土地の開墾を含めれば莫大な時間と資金が必要) なのに対し、金は鉱石さえ取ってこれば、すぐにお金になるんだよ。金採掘と自分たちの生活は密接にかかわっているんだ。

日本では、水銀=魚と思われがちなのだが、水銀は大気中にも水銀の蒸気として、どんどんと放出されている。このような場所では、人々は食べものを介してのみならず、呼吸によって水銀を取り込んでしまう。大気中の水銀には色もにおいもなく、測定しなければ身の回りの大気が高濃度であるかを知ることができない。金精錬は地区一帯で大規模におこなわれる場合もあれば、家の裏庭、というように家族単位で行う場合もあり、いったい、どの程度、このような非合法での金精錬行われているかを知ることすら容易ではないのである。


 水銀にかんする水俣条約も2017年8月に発効され、小規模金採掘活動由来の水銀汚染の実態を把握することや、そのリスクを解析すること、そして、その対策が急務となっている。私達はインドネシアとモンゴルをメインに、小規模金採掘由来の水銀汚染の状態を観測したり、人々の生活様式についての聞き取りなどを行っている (参考論文:Nakazawa et al., Ecotoxicology and Environmental Safety, 2016, 永淵ら 環境科学会誌 2018. ほか) (KN)



得られた金。小規模金採掘をしているおじさんが「ほらっ」と、見せてくれた。おじさんのもつ施設では1日平均 4 g の金が得られるという。 


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